心と和 最終杯『あき』
金木犀の香り漂う今日この頃。
色も形も無いけれど、確かに感じる「秋」の訪れ。
その語源は「飽き」という説がある。
「実りの秋」とも呼ばれるように、作物が結実し収穫を迎えるこの季節。
食卓が賑わい心身共に満ち足りる、「充足する」という意味で「あき(飽き)」と名付けられたのだそうな。
現代では「もう要らない」というネガティブなイメージを持つ「飽きる」という言葉。
しかし、本来の意味は前述の通り「満ち足りる」。
吾唯足知
現代語訳:われ、ただ足るを知る。
京都龍安寺の蹲踞に刻まれている四字熟語。
物事に富み、求めるよりも前に与えられる現代で、飢えも渇きも知らず、よろこびに「飽き」た私達。
水の美味しさは、喉が渇くから沁みるもの。
ミニマムライフ、プチ断食、地方移住…
そんな「手放す」ことが流行する現状は、豊かさの裏返しなのかも知れない。
飽きるほど、恵まれた私達。
「もう要らない」「満ち足りる」
さあ、今年の秋はどちらの心で歩もうか。
片岡妙晶
真宗興正派 僧侶・宇治園製茶公認日本茶大使
ネコさんと売茶翁が好き
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