私の出身地である香川県には「中津万象園」という庭園がある。

香川県の西半分に当たる丸亀藩を収めた大名「京極家」が建てた大名庭園だ。
近江八景をモチーフとした造りには、粋を愛した婆娑羅大名らしい風情が漂っている。

中でも、六代目藩主「高朗(たかあきら)」氏はその文化人としての血を色濃く受け継いでいたそうな。

琴峰の号で詩作に耽り、明治維新後「居所は東京に」という政府の方針も無視して丸亀に住み続けたという。

そんな高朗氏の話を聞く中で、ふと「高朗氏が妾を選ぶならどんな人だろう」なんて出来心が起こり、先日撮影をして貰った。

会ったことも触れたこともない、ともすれば本当に居たかすら私には確かめようもない存在だけど、想うことはとても楽しかった。

「歴史は想像することに意味がある」と誰かに聞いたことがあるけれど、その通りかも知れないな。
今にも崩れかねない古い建物も、其処に居た誰かを想い、慈しめたなら、また触れ方も変わるだろう。

「擬人化」なんて単語を当てはめてしまえば安っぽいけれど、目には映らない姿を心に描き宿す力は何物にも代え難い。
叶うなら、その力は誰かを慈しむ為に使いたいと希う。

社会を生きる私達は、他者と在るが故の苦悩も多いだろう。
そんな日々を歩む私達なればこそ、瞼の裏は愛しいもので満たしたい。

そんな心で今日も一杯、ご相伴に預かります。

 

 

片岡妙晶

真宗興正派 僧侶・宇治園製茶公認日本茶大使

ネコさんと売茶翁が好き

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