心と和 第三十三杯『清風』
茹だるような暑さの続く今日この頃、皆さま如何お過ごしでしょうか。
梅雨が一瞬で終わったかと思えば、先日は台風のような大雨が。晴ればかりで暑さが増すのも困るけれど、雨のジメジメもまた鬱陶しい。
「雨を喜ぶも厭うも我が心次第」
「あるがままを有難く受け取ってゆきましょう」
なんて殊勝なことを法座では語ったりもするけれど、正直、冷房の効いた部屋から出たくない。
ボタン一つで気温すら思い通りになった現代。
しかし、一昔前はどうだったろう。
エアコンどころか扇風機すら無かった頃。
お殿様でさえ夏の暑さから逃げることは出来なかった時代は、どうしていたのでしょう。
古くより、日本の夏といえば、風鈴に鹿威、怪談に花氷。
身体を冷やすだけでない。
想像力を働かせ、五感まるごと使って「涼を呼ぶ」風物詩。
身体を「冷ます」には水にでも浸かれば済むけれど、「涼しさ」を手に入れようと思ったら、そうはいかない。
「涼」という言葉には「清らか」という意味も含まれている。
涼を得るには、先ず心から。
一椀喉吻潤 両椀破孤悶
三椀捜枯腸 唯有文字五千巻
四椀発軽汗 平生不平事尽向毛孔散
五椀肌骨清 六椀通仙霊
七椀喫不得也 唯覚両腋習習清風生
売茶翁が掲げた茶旗の由来でもある、廬仝の七椀茶歌。
要訳すると、「一杯目の茶で喉が潤い〜中略〜六杯目で仙人のようになり、七杯目は飲む必要も無いくらいで両脇に清らかな風が生まれる」。
茶を飲んで、喉だけでなく全身で味わい、感動に浸った昔の人々。
身体は暑くとも、心は涼やかだったのだろう。
そんな、清風吹き抜ける涼を呼ぶべく、今日も一杯。
片岡妙晶
真宗興正派 僧侶・宇治園製茶公認日本茶大使
ネコさんと売茶翁が好き
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