以前、連れて行って頂いたBARでヴィンテージのお酒を飲ませて貰ったことがある。

その時に頂いたものは、ヴィンテージの中でも特に古いとされるものだった。

けれど、その価値をどれだけ説明されても、いまいちピンと来なかった

「これは凄いんだ」
「○年前の〜」

と、どれだけ情報を与えられても「そうなんだ」以上の感想は湧かず、心が揺らされることはなかった。

しかし、「幸せだね」と言われた瞬間にハッとした。

お酒に限らず、古いものをこれから新しく作ることは出来ない。
それを今この口に出来ることは、とても幸せなことなんだ。

そんな「幸せの汲み取り方」を教えて貰った気がした。

人の世では、次々と新しいモノが生み出され、昨日まで大切にされていたものが今日はゴミ箱に捨てられているなんてこともザラにある。

しかし、新しいモノが生まれたからといって、既にあるモノの価値がなくなるわけじゃない

文明が発展し、新古が混ざり合う豊かな現代だからこそ、そのどちらをもよろこべる心を伝えたい。

「○○がある」ではなく「○○もある」世界を紡いでゆこう。

熟成ワインフレッシュジュースで乾杯するような、それぞれに違う心を抱く人間だからこそ、誰もがよろこべる世界を作ってゆける。

そんな願いを胸に、今日も一杯のお茶を呑む。

片岡妙晶

真宗興正派 僧侶・宇治園製茶公認日本茶大使

ネコさんと売茶翁が好き

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