「この夏」も いつか「あの夏」に

全ての事柄は常ならず、移り変わる諸行無常の世へ生きる私達。

物も、人も、心すら一時たりとも同じでは無い。

仏門を叩いて以来7年目。

依然まだまだ未熟とはいえ後進も徐々に増え、「新人ですので」を言えない場面にも遭遇するようになってきた。
そんな現実に焦りを覚えたとき、初めて己は「若さ」を拠り所としていたのだと気付かされた。

「一人っ子」として可愛がられていた子供に弟や妹が生まれたようなものだろうか、居場所を取られたような感覚だ。

しかし、「新しいものが生まれたからといって、これまでの意味が無くなるわけではない」のだろう。

日々新たなものが生まれては消えてゆく、移り変わりの激しい現代社会。

だが、そこに在った歴史は無くならない。

新たな人々の登場に己の意義を見失い、不安がよぎることもあるけれど、だからといって現在の立場や権力にしがみ付く必要は決してないのだ。
これまでの自分を信じ、後進へ受け渡してゆくこともまた人生における楽しみの一つだろう。

日々移り変わる諸行無常に生きる私達。

だからこそ、誰かを頼る子であると同時に、誰かを安心させられる親になれたらと想う。
妹や弟が生まれたからといって、子で無くなるわけでは決してないのだ。

現世は無常であっても、人間は無情じゃない。

案外世間は優しいのよ。

なんて、希望を込めて恩送りの一杯を。

 

片岡妙晶

真宗興正派 僧侶・宇治園製茶公認日本茶大使

ネコさんと売茶翁が好き

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