心と和 第二十四杯『結葉』
寒くもなく暑くもない、なんとも過ごし良い今日この頃。
山笑う今の季節は、気温に限らず五感全てに優しいようだ。
コロナ禍に突入しstay homeが叫ばれ始めた2年前。
京都と二拠点生活をしていた私は、動きが制限され香川の実家に留まっていた。
実家があまり好きでは無いゆえしばらく不貞腐れていたが、ふと「折角だしこの環境を満喫しよう」と思い立った。
その足で、とりあえずハンモックと七輪を手に入れた。
日なかは裏庭でハンモックに揺られ、陽が落ち始めたら炭火を焚いて夕餉にした。
熾火となる頃にはすっかり宵闇に包まれ、炭の弾ける音や虫の音が響き渡っていた。
不思議なもので、色数の多い昼間よりも、ささやかな声がひそかに飛び交う暮夜こそ賑やかに感じた。
親鸞曰く、我々は「衆生」というらしい。
人も鳥も花も含め、この世に在る「生きとし生けるもの」全てを指し、「衆で生きるもの」としてそう呼ぶのだとか。
不登校だった学生時代、ふと深夜に思い立って、夜空を眺めに外へ忍び出ることが度々あった。
自分でも何をしたいのかよく分からなかったが、今思えば「自然」という名の「他者」と触れ合い、温もりを得ていたのだろう。
現代では、結ぶと言えばもっぱら「人と人」との縁だが、何とだって結ばれても良かろうに。
私の為に灯るわけでは無い月明かりを私が勝手によろこぶ、そんな関係性が心地好かった。
人間同士もそう在れたら良いのにな。
いつか、人が「集団」から「衆生」に戻れる日が来るかしら。
なんて皮肉混じりに呑んだ茶も、皆と御相伴に預かれば春宵一刻。
清風駆け抜ける味がした。
片岡妙晶
真宗興正派 僧侶・宇治園製茶公認日本茶大使
ネコさんと売茶翁が好き
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